迷い
hesitation
短編官能小説「迷い -決断の狭間- 」
指先が触れた瞬間、身体が小さく震えた。
躊躇いの色を帯びた吐息が、互いの距離を曖昧にする。
求めているのに踏み込めない。
あと少し、もう少し…。
彼の唇が肌をかすめる。
熱はあるのに、触れたか触れていないかわからないほどの軽さ。
焦れったい。
けれど、そのじれったさが心地いい。
彼女はシーツを握りしめた。
このまま流れに身を任せるのか、それとも…。
「…今、やめたら、もう後戻りできないよ?」
甘く問いかける声に、彼は静かに息をのむ。
「迷ってるのは、どっちなんだ?」
指先が、ゆっくりと秘めた場所をなぞる。
浅く、深く、また浅く。
意地悪なほどにゆっくりと。
彼女の背が弓なりにしなる。
けれど、まだ、最後の一線は越えない。
この夜が明けるまでに、決断できるだろうか。
それすら、もうわからなくなっていた。
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